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− 6 アンテナが発する磁界 −
2023/03/10
< 1 ダイポールアンテナが発する磁界 >
図1の送信用ダイポールアンテナが発する磁界は、「電波の生成」において 掲示したものである。
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なお、本図においても、橙色は画面を表から裏へと貫く方向の磁界、
青色は画面を裏から表へと貫く方向の磁界を示し、以下においても同配色で磁界の方向を示す。
図2に、ダイポールアンテナの後方に反射板を配置し、片側に集中して発した磁界の様子を示す。
この磁界をさらに集中すれば、図4に示す角錐ホーンアンテナが発する磁界のようになる。
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鉛直に立てたダイポールアンテナは、上下双方に平衡 (Balance) 信号を供給する都合上、
片側がGNDの不平衡 (Unbalance) 信号を使用する場合は、
例えば、図3のバラン(balun: balanced-to-unbalanced) のようなトランスを使用する。
(後述の「参考図」に、供給される平衡信号(交流電流)と、
当平衡信号がアンテナを通過する過程で磁界を生成しながら消滅する様子を、
コマ送りにして示した図を掲示する。)
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なお、平衡信号については、前述の「電流の様子」の「導線内を進行する電流の様子」に記載。
< 2 角錐ホーンアンテナが発する磁界 >
図4に、角錐ホーンアンテナが発する磁界の様子を示す。
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方形導波管の上部通電部(天井の中央)と下部通電部(床の中央)を流れる電流が生成したリング状の磁界が、
角錐ホーンアンテナの上下通電部の間隔拡大にしたがって、次第に通電部から離れ、
後続の電流が発する磁界に押されて、開口部から出射されて電波(移動する磁界)となる。
一方、通電電流はダイポールアンテナを流れる電流と同じように、
間隔が広がる角錐ホーンアンテナの上下通電部を流通する過程で減衰し、最終的には消滅する。
なお、角錐ホーンアンテナ(方形導波管)への給電は、上下通電部に平衡に電流を供給する都合上、
例えば、同軸ケーブルで給電する場合は、図5のように、給電用の導体を一方の壁から貫いて給電する。
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ちなみに、「電気と磁気の力」に後述するように、
図5において示した 方形導波管と角錐ホーンアンテナの上部(天井)と下部(床)の中央の
実質的な電流経路は、対向側の電流が発する磁界の影響や表皮効果によって形成される。
図6は、方形導波管と角錐ホーンアンテナに、鮮明な電流経路を形成して、
当電流経路の間隔を好適なスロープで拡大する リッジ(板状突起部:Ridge)を設けた
ダブルリッジ(Double Ridged)式導波管と ダブルリッジ式ホーンアンテナを示す。
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図7は、導波管を介して 角錐ホーンアンテナ(ダブルリッジ式)に供給された交流電流が磁界を生成し、
生成された磁界が 空間に伝搬する様子を コマ送りにして示した図である。

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上記のように、ホーンアンテナに供給された電流が、ホーン部の壁面あるいは上下リッジの対向部を流れ、
各所で磁界を生成しながら消滅する一方で、生成された磁界が、後続の磁界に押されて 空間に放たれる。
なお、ダブルリッジ式においては、通電電流が上下リッジの対向部の表層に集中しているため、
導波部から アンテナの先端部までのインピーダンスが滑らかに変化するリッジを設計しやすく、
導線と空間を整合するアンテナを構成しやすい。
また、電流経路が狭部に絞られ、部材の選定が容易なため、導波管やアンテナの特性を維持したまま、
電流の流れない外周部材を、発生磁界の漏洩防止、外来磁界の侵入抑制、
あるいは、リッジを支えること等に特化させて、変形あるいは簡素化することもできる。
ちなみに、ダブルリッジ式ホーンアンテナが発する磁界の様相は、
図2に示す片側に集中したダイポールアンテナが発する磁界をさらに集中したものと同様であるため、
ダブルリッジ式ホーンアンテナ開口部の 出力方向に対して垂直に開いた上下2本のリッジと、
ダイポールアンテナを構成する2本の導体は、同様な働きをしていると言える。
また、リッジ付きの角錐ホーンアンテナは、角錐ホーンアンテナの特性を改善したものであり、
角錐ホーンアンテナの電流経路(電流が集中して流れる部位)の働きも、またしかりである。
見方を換えれば、リッジ付きを含む角錐ホーンアンテナが発する磁界と、
ダイポールアンテナが発する磁界は、指向性が異なるだけで、同形態の磁界である。
< 3 円錐ホーンアンテナが発する磁界 >
図8に、円錐ホーンアンテナが発する磁界の様子を示す。
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同軸ケーブルおよび円形導波管を流れる電流が形成するリング状の磁界が、
円錐ホーンアンテナの円錐通電部の直径拡大にしたがって、次第に通電部から離れ、
後続の電流が発する磁界に押されて、開口部から出射されて電波となる。
一方、通電電流はダイポールアンテナを流れる電流と同じように、
直径が拡大する円錐ホーンアンテナの壁面を流通する過程で減衰し、最終的に消滅する。
なお、円錐ホーンアンテナおよび円形導波管への給電は、
例えば、図9のように、軸方向から接続した同軸ケーブルによって給電されるが、
電流は上記方形導波管と角錐ホーンアンテナの上部と下部通電部のように集中するところはなく、
図示のように円筒状の壁面を均一(円筒の周方向の電流密度は均一)に流れる。
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図10は、同軸ケーブルを介して 円錐ホーンアンテナに供給された交流電流が磁界を生成し、
生成された磁界が 空間に伝搬する様子を コマ送りにして示した図である。

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なお、円形導波管や円錐ホーンアンテナに通電される高周波電流は、
「電気と磁気の力」に後述するように、表皮効果によって図10に示すように内壁表層部に流れる。
したがって、壁が適度に厚ければ、導波管やホーンアンテナの外側は
いわゆる接地点(グランド)と同電位で、触れても感電はしない。
ちなみに、上記円錐ホーンアンテナから発する磁界 および シンクロトロン光の磁界の様相は、
磁界の進行方向を回転軸にしたリング状であり、
他のアンテナが発する進行方向に対して極性が直行する磁界形態とは異なるが、
受信するときには、いずれも単純な交番磁界である。
< 4 クロスダイポールアンテナ(ターン・スタイル・アンテナ)が発する磁界 >
図11は、クロスダイポールアンテナ(ターン・スタイル・アンテナ)において、
直交する2対のダイポールアンテナの一方に、1/4波長遅延した信号を供給する構成を示す。
当構成は、ダイポールアンテナを破線で加筆したようなコイルにすれば解りやすくなるように、
2個のコイルを直交配置して回転磁界を生成する2相の交流モータのステータ(固定子)と同様であり、
この2対のダイポールアンテナから生成される回転磁界を、
前述のように、順次供給される後続の交流信号によって アンテナから引き離し、遠方に押しやることで、
2対のダイポールアンテナが形成する面に対して垂直方向に発する 円偏波された磁界が生成される。
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図12は、クロスダイポールアンテナが発する円偏波された磁界の様子を コマ送りにして示した図であり、
上段が出射方向に向かって左旋回で位相を遅らせて出射した左旋円偏波の磁界で、
下段が右旋回で位相を遅らせて出射した右旋円偏波の磁界である。

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なお、上記クロスダイポールアンテナには、図13に示すように、
当図のZ軸方向以外の方向には直線偏波の磁界を同じ強度で発する指向性があり、
Z軸方向に円偏波で発する磁界よりも、それ以外の方向に発する直線偏波の磁界の方が強く、
円偏波の磁界を生成するアンテナとしては効率が悪い。
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したがって、クロスダイポールアンテナは、円偏波された磁界の受信用に使用され、
直線偏波した磁界をX軸とY軸が形成する面方向に発するときは、
X軸方向とY軸方向の指向性を高めた ターン・スタイル・アンテナを使用することが多い。
なお、円偏波の磁界を効率よく発するためには、例えば、図14のように板状リッジを4枚備えた
クワッドリッジ(Quad Ridged)ホーンアンテナを使用する。
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ちなみに、交流モータ駆動用の巻線(コイル)が完全に直交していなくても ロータ(回転子)が回るように、
円偏波の磁界を発するために、必ずしも2対のアンテナを直交させる必要はなく、
交差させた角度に応じて、信号を適宜に調整して供給することで回転磁界を生成することができるため、
ホーンアンテナやパッチアンテナにおいては、
遅延が1/4波長に満たない遅延部材を追加して 円偏波の磁界を生成することもある。
また、上記のように円偏波の磁界は、交流モータのロータを回す回転磁界のような旋回する磁界を、
アンテナから引き離し、遠方に押しやって出力した磁界であるため、
直線偏波した磁界が金属のような導電性物体を押す力を有す(前述「電波の受信」参照)ように、
円偏波した磁界には 金属のような導電性物体を回転する力を有す。
参考までに、交流モータにおいては、駆動電源を 例えば3相交流のような複相電源にすることで、
駆動用コイルの数を増して電流を分散し、各コイルに流れる電流を低減することができ、
回転磁界を滑らかに回すことができて、電力を効率よく動力に変換することができるように、
図15のように、リッジの数を増し、大きな出力の円偏波磁界を効率よく発するアンテナも考えられる。
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なお、交流電源が3相であれば、そのまま整流しても脈流の少ない直流が得られるため、
電力の伝送用には好都合であり、受信用に相応のレクテナ(アンテナ付き整流器)ができるかも知れない。
また、直線偏波した磁界を発するときに、送信器自身への反力として推進力が生じるように、
円偏波した磁界を発するときには、送信器自身を回転させる反力が発生することも考えられる。
< 5 ジャイロトロンのモード変換器から発する磁界 >
図16は、ジャイロトロンの中に備えられたモード変換器の概略構成、および、
円形導波管から入力されたリング状の磁界が、モード変換器によってコイル状の磁界に再偏波される様子を示す。
(ジャイロトロンおよびモード変換器については、例えば 東京大学の、
「原子力機構におけるジャイロトロンの開発と応用研究「09hosoku.pdf (u-tokyo.ac.jp)」の
ジャイロトロンの原理」参照)

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上記のように、円形導波管から入力されたリング状の磁界が、
円錐ホーンアンテナの先端を螺旋状に切り開いたモード変換器を通過するとき、
壁に沿って進行する壁側の磁界に対し、
切り開かれた部位から放出された磁界は、導波管の管軸から離れる方向に拡大する。
発生したリング状の磁界が後続の磁界に押され、片側に偏り 偏芯して 拡大しながら進行すると、
各リング状の磁界の磁気経路が伸長し、やがて、並行して連なる各リングの磁気経路の総延長より、
各リングを切開して、それぞれに隣接する磁気経路を直列に繋いだ磁気経路の方が短くなるので、
安定側となる短い磁気経路を形成すべく、それぞれを直列に繋いだコイル状の磁界に切り変わる。
当時点以降は、継続して発せられるリング状の磁界がちぎれて、先行するコイル状の磁界に繋がり、
導波管の管軸方向から離れた方向に伸長する(順次巻回数を増して延伸する)コイル状の磁界が形成される。
なお、図16の円形導波管は、上記参考資料を含む一般的な資料における空洞共振器の外筒に対応する。
また、モード変換器で形成されたコイル状の磁界は、上記参考資料でも高周波ビームと称されるように、
光(ガウシアンビーム)のような指向性の鋭い磁界となる。
ちなみに、上記コイル状磁界は、
図17のような円形導波管の途中に設けたモード変換器によっても形成できる。
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上記の導波管式のモード変換器は、円形導波管の途中に挿入した円筒部の壁を切り裂き、
内側の電流が通過する部位の長さ(経路長)が円周方向に順次長くなるように 壁を引き延ばして、
電流通過経路の最短部と最長部の経路長の差が 1波長なるように、当円筒部を膨らませたもので、
画面左側の円形導波管から入力されたリング状の磁界を コイル状の磁界に変換して、右側へ出力する。
あるいは、画面右側から入力されたコイル状の磁界を リング状の磁界に変換して、左側へ出力する。
なお、コイル状磁界の巻方向は、経路長が変化する方向(円周上の回転方向)によって設定でき、
モード変換器の経路長の変化方向を逆転すれば、巻方向の反転したコイル状磁界を生成できるが、
結果的に 当反転用のモード変換器は 先のモード変換器の左右を逆転したものと同じになる。
つまり、コイル状磁界の巻方向は、モード変換器の入出力の接続方向によって設定することができる。